「ベーシックインカム」制度 導入議論急速に盛り上がり(J-CASTニュース)

 すべての人に最低限の所得を保障する「ベーシックインカム」導入の議論が、急速に盛り上がってきた。鳩山首相も「検討すべき」と明言し、研究者らが意見交換のネットワーク組織を立ち上げるなど、具体的な動きが相次いでいる。

 お堅い話なのに、ネット上の盛り上がりぶりは異例だ。

 ニコニコ生放送で2010年2月21日にホリエモンこと堀江貴文氏らが参加して放送された「朝までニコニコ生激論」。未明の放送にもかかわらず、ベーシックインカムの生討論には、累計5万人もが視聴した。

■ブログきっかけに関心高まる

 コメント総数は、なんと18万件にも。回線制約で同時に1万人しか見られなかったものの、3時間半の放送中、常に同人数が張り付いた状態だったというのだ。

 ベーシックインカムは、欧米では200年以上前から唱えられ、1960年代ごろから社会運動になったとされる。日本で最近、急速に注目を集めるようになったのは、長引く不況や格差社会への不安などが背景にあるらしい。具体的には、最低所得が月5〜8万円の支給レベルで議論されている。

 ネット上で注目を集めたきっかけは、経済評論家の山崎元さんが07年8月28日に書いたブログだった。「『ベーシック・インカム』を支持します」。こんなタイトルで、ベルギーの政治哲学者の論文を読んで共感したというそのメリットについて、かなりの長文で紹介している。

 これが、堀江貴文氏やアルファブロガーの小飼弾氏らのブログで紹介されると、瞬く間にネット上で議論が広がった。これらのブログには、コメントが多数付いており、その関心の高さがうかがえる。

 政治的には、新党日本が09年8月の衆院選でマニフェストに掲げている。民主党政権でも、この盛り上がりぶりに関心があるようだ。鳩山由紀夫首相は10年2月26日の衆院予算委員会で、新党日本の質問に対し、ベーシックインカムが「検討されるべきだ」と答弁している。

■メリットやデメリットあり、現状は賛否両論

 ベーシックインカムの議論では、メリットやデメリットが指摘され、現状は賛否両論だ。

 メリットとしては、最低限の生活保障はもちろんだが、生活保護や失業手当、年金などの制度がなくなり、行政コストが削減されることが挙げられる。また、仕事を作るだけの公共事業を減らすことができる。いわば「小さな政府」になるということだ。さらに、労働者にとっては、失業が怖くなくなり、仕事を生きがいで選ぶことができる。逆に、企業は、雇用調整がしやすくなり、事業に専念できるという。

 一方、デメリットとしては、何より財源が大きくなり過ぎることが指摘される。ある試算では、月8万円なら単純計算で年120兆円の予算が必要になり、所得税が40%以上にもなるというのだ。また、働かなくても支給される人がいて、バカらしくて働かなくなるとされる。また、みなが嫌がる重労働などをしなくなったり、生活が保障されるので犯罪が増えたりする、など様々な指摘がある。

 ネット上でも、賛成派の堀江貴文氏に対し、ひろゆきこと西村博之氏は2010年2月21日付ブログで、「空虚な議論」として異論を唱えるなど、意見がまとまっていない。

 こうした議論を建設的に進めようと、研究者の間では、意見交換の場を作る動きが出てきた。京都府立大公共政策学部の小沢修司教授らが3月27日に設立した「ベーシックインカム日本ネットワーク」だ。その代表となった小沢教授は、こう語る。

  「貧困・格差の広がりで、従来の社会保障が機能不全に陥っています。ベーシックインカムは、それに代わる新たな制度になりうると考えています。その中で、多様な働く形が広がり、人生の選択肢が増える社会も実現するでしょう。しかし、まだ内容が多くの人に伝わっていません。従来の福祉の考え方と相容れず合意形成は難しいので、まずその考え方を知ってもらうことが大事だと考えています」


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